【西川貴教インタビュー前編】新しい挑戦の意義|クリエイティブとは

著名なクリエイターにお話を聞くシリーズ企画「クリエイティブとは」。西川貴教さんインタビュー前編です。挑戦への原動力はどこから生まれるのか。魅力の秘密に迫ります。

ものづくりで消耗した自分を補うために“挑戦”は必要――クリエイティブとはアーティスト・西川貴教インタビュー[前編]

クリエイターとして注目の著名人のもとへ、自身も同人作家である編集部スタッフが伺い、お話を聞くシリーズ企画「クリエイティブとは」。今回は、2016年8月にコミックマーケットに参加したアーティスト、西川貴教さん。歌手活動だけでなく、舞台俳優や声優としても多くの芸術作品に関わっている西川さんに、クリエイターとしての心構えを聞きました。

T.M.R.デビュー20周年を迎え、「西川貴教」名義での音楽活動をスタート

西川貴教さんが自身のソロプロジェクトであるT.M.Revolutionとしてデビューしたのは1996年。以降、持ち前の歌唱力と親しみやすいキャラクターで人気を博し、音楽シーンの中で常に存在感を示してきました。そんな西川さんが昨年、T.M.R.デビュー20周年イヤーを完遂した後、“西川貴教”名義での活動をスタートさせると発表。その心境はどのようなものだったのでしょうか――

「まずは、T.M.Revolutionというひとつのプロジェクトを20年間続けられた大きな節目、というのがありました。それから、これはプライベートなことになりますが、昨年母を亡くしまして…。覚悟はできていたものの、やはり喪失感もありましたし、思うところはたくさんありました。その中でT.M.Revolutionとして歩んできた20年間を振り返ったとき、周囲の方々の支えがあってこその活動であることを改めて感じると同時に、僕の中で知らず知らずのうちに『T.M.Revolutionとはこうあるべき』というようなものを、勝手に定義付けてしまっていたように思えたんです。ですから、20年という区切りを迎えた今、もう一度、自分の声やボーカリゼーション(発声)に改めてフォーカスをあてたプロジェクトをやってみたい、“西川貴教”という、親からもらった名前で向き合いたいと思ったんです」

今回のプロジェクトについて、「新たなアーティストを一から作る感覚」だと言う西川さん。今年3月にリリースした、西川貴教名義の1stシングル「Bright Burning Shout」では、作詞を田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)が、編曲を神前暁(MONACA)が担当。11月14日にリリースされた2ndシングル「His/Story / Roll The Dice」(両A面シングル)でも、音楽家・澤野弘之とタッグを組み、自身も声優として参加する日台合同映像企画「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2」のオープニングおよびエンディングテーマを作り上げた。

11月14日にリリースされた2ndシングル「His/Story / Roll The Dice」の初回生産限定盤(CD+DVD)ジャケット。

11月14日にリリースされた2ndシングル「His/Story / Roll The Dice」の初回生産限定盤(CD+DVD)ジャケット。

「前作も今作も、一緒にやらせていただく方の中に、僕のこれまでの作品やイメージがあって。それを踏まえて、自分だったら西川にこう歌わせたい、こういう曲ならきっと魅力的になるんじゃないかという想いを持って、楽曲を提供してくださるんです。それに対して僕が、100ではなく120とか150とか、できれば200で返していくことに、このプロジェクトの意義があるんじゃないかと思っています。ですから、制作中も互いに意見をどんどん出し合って発展していくというか…。それがすごく楽しいですし、出来上がったものに対して、みなさんが満足してくださることが幸せだと感じています。そうして、『西川とやって良かった』って思ってもらえることが僕の幸せでもあります。その幸せを、音楽でも再び感じさせてもらえている気がします」

自分一人で作るのではなく、誰かと作ることでの発見

アーティストというと、みずから作詞・作曲をし、セルフプロデュースまで行うというイメージが強いかもしれませんが、西川さんは自分が作品の一部となり、誰かとともに作り上げていく喜びを見い出しているといいます。これには、西川さん自身が行ってきたこれまでの活動が大きく関係しているそうです。

「ありがたいことに、舞台や声優など、音楽以外の活動に挑戦させていただく機会がこれまでたくさんありました。そういったオファーを受けるのって、実際すごく大変で。勇気もいるし、恥もかくし、悔しかったり、大きな挫折を味わったりもします。ただ、音楽の現場では基本的にすべて自分でジャッジを下すのに対し、お芝居の現場には演出家がいます。そうなるとやはり、僕は作品の一部になって、演出家が言ったことをやるのが大事であって。たとえそのときは疑問に思ったとしても、それをきちんと意味のあるものに成立させるのは自分の力でもあるし、後々納得するタイミングが必ずあるんです。そういった経験をしていく中で、新しい自分を発見することもあります。今回のプロジェクトも、「ボーカリゼーションだけでどういったものができるのか」といった意味合いが大きいかもしれません。そして、今まであまり接点が無かったクリエイターの方と積極的に関わりを持つことが、もう一度自分自身を発見する作業になっている気がするんですよね。一緒に組んでくれる方の目を通して、耳を通して、“もう一度自分を知る”という」

新しいことをすれば、そこには‟自分の知らなかった自分“という発見がある。これは、取材に伺った同人活動をしているスタッフにとっての悩みでもありました。同人活動を続けていくことで、変わることへの恐怖が出てきて、新しいことになかなか挑戦できなくなってしまう。この悩みについて、西川さんはこのように答えてくれました。

コミケ参加も、こうして私たちの取材を受けてくださるのも自分の発見になると語ってくれました。

コミケ参加も、こうして私たちの取材を受けてくださるのも自分の発見になると語ってくれました。

「誰しも人の反応は気になるもの。せっかくやるのだから喜んでもらいたいと思うのは当たり前だし、それがお金をもらってとなると、尚更そうなるでしょう。だから臆病にもなるし、不必要に悩んだり、回り道をしたりするんです。それでも、新たなことを始めようとするときや、何かを変えようとするときは、僕はこう思うようにしてるんです。“格好悪い自分を受け入れよう”って。誰でも初めは初心者ですからね。恥をかいたり悔しい気持ちになることを恐れたりするでしょう。でも、そういう自分を受け入れることで、次に進むことができると思うんです。僕の場合だと、舞台やお芝居の世界という新しい挑戦についてがそうで、僕は、舞台の現場では自分が一番下だと思ってやっています。だからどんどん恥もかくし、『なんでこれができないんだ』なんて悔しい想いをしながらやっています。でも、稽古なんだからできなくて当然。格好悪い自分を避けたまま、本番で恥をかくほうがよっぽど嫌ですからね」

なぜ挑戦するのか。その原動力とは?

音楽や芝居、声優のほか、野外音楽フェス「イナズマロック フェス」の主催、さらにはCM出演など、西川さんの活動は多岐に渡ります。その様子に、時にはアーティスト仲間や後輩たちから「どういう考えでそのようにしているのですか?」と疑問を投げかけられることもあるといいます。

「そりゃそうですよね(笑)。アルバムを出して、ツアーをして、というアーティスト活動だけでも、1年はあっという間に過ぎていくわけですから。もちろん、大変じゃないと言ったら嘘になります。でもやっぱり、ものを作るというのは、ある種自分の中にあるものを削って出していく作業じゃないですか。では、アウトプットで消耗している部分を、どこで補って、インプットしているのか。それが、僕の場合は自分の体験というか、これまで触れたことがないものに触れることで感じるものだったりするんです。先程、新しいことに挑戦するのは勇気もいるし、挫折も味わうと言いましたが、それでも挑戦する理由は、恐れていたらそこまでになってしまうからなんです。それに、挑戦することって、別に10代とか20代じゃないといけないものじゃないと思うんですよね。人生100年なんていわれている今、まだまだやれる時間はあるし、やらなきゃいけないこと、できることがたくさんあるんじゃないかなって思います。何かを学んだり、吸収したりって、いつでもいいんですよ。そのタイミングは自分で作るもの。誰かがくれるものではないから、自分で迎えにいくしかないんです」

 

後編へ続く――

編集部コメント

前編では、西川さんがT.M.Revolutionとしてデビューしてから、本名である西川貴教名義での活動に至るまでを語っていただきました。印象的なお話のなかでも、「新しいことに一歩踏み出すときに格好悪い自分をどれだけ受け入れられるか」というお話は、「自信が無くて同人活動を始める最初の一歩が踏み出せない」という悩みを持つ人にとって、ハッとするメッセージだったのではないでしょうか。

後編では、アーティストとして、クリエイターとして、さまざまな挫折や葛藤を感じながらも、それでも常に前向きでいられたのはなぜか。その理由に迫るとともに、ものづくりに携わる“同志”の視点から、表現者に向けたメッセージもいただきましたので、どうぞお楽しみに!

 

西川貴教 プロフィール

 1970年9月19日生まれ。滋賀県出身。1996年5月、ソロプロジェクト「T.M.Revolution」としてシングル「独裁 -monopolize-」でデビュー。キャッチーな楽曲、観る者を魅了する完成されたステージ、圧倒的なライブパフォーマンスに定評があり、「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」「INVOKE」など大ヒット曲を連発する。故郷滋賀県から初代「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、県初の大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を主催、地方自治体の協力のもと、毎年滋賀県にて開催している。2016年5月にはT.M.Revolutionデビュー20周年を迎え、オールタイム・ベストアルバムをリリース。オリコンアルバムチャートで1位を獲得し、2017年5月には20周年プロジェクトの集大成としてさいたまスーパーアリーナ2days公演を開催。2017年からは西川貴教名義での音楽活動を開始。11月に2ndシングル「His/Story / Roll The Dice」をリリース。常に新しい挑戦を続けている。

 

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