1ヶ月で作れた! はじめての同人誌づくり(5)レイアウトデータ編

ライター:さいとうよしかず

「1ヶ月で作れた!はじめての同人誌づくり」5回目は、メイン工程ともいえる印刷用のデータの作成についてです。前回までは、同人誌制作未経験の私が同人誌即売会「コミティア」で頒布することを決め、頒布する同人誌の内容を考えた上で実践して原稿を執筆。また、画像加工ツールを使って、掲載画像のデータを作成しました。

今回は、Adobe Illustrator CCを使って、テキストデータや画像データをレイアウトし、同人誌の誌面レイアウトデータをデザインしていきます。

誌面レイアウトの流れ

まず、レイアウトデータを作る前に、本のサイズや印刷の色、印刷の方法などを考えました。今回は、はじめての同人誌ということもあり、本のサイズは同人誌で一般的な「A5サイズ」にしました。色は料理がおいしく見えるようにフルカラーとします。

印刷は、少部数の制作に向いている家庭用プリンターとしました。今回、誌面レイアウトの作成には、Adobe社のグラフィックソフトAdobe Illustrator CCを使いました。このソフトは、イラストやロゴ作成などに向いているソフトですが、誌面レイアウトづくりなどにも応用可能です。こちらのソフトは、「単体プラン」で月額2,180円(税別)で利用できます。なお、この価格は2018年11月時点のものですので、実際に申し込みするときには必ず確認してください。

レイアウトを作るための環境

プロファイルが「プリント」に設定されていれば、サイズや長さの単位、解像度、カラーモードも印刷向きになる。

プロファイルが「プリント」に設定されていれば、サイズや長さの単位、解像度、カラーモードも印刷向きになる。

まずは、Adobe Illustrator CCを起動して、レイアウトを作るための環境を設定しましょう。「ファイルメニュー」から「新規」を選ぶと、「新規ドキュメント」ダイアログが表示されます。

ここで重要なのは、「印刷」タブを選ぶことです。印刷タブにすることで、プロファイルが「プリント」に設定され、サイズや長さの単位、解像度、カラーモードなどが、印刷に適した設定になるのです。

あとは、「サイズ」の項目で、作りたい同人誌に適した用紙サイズを選びます。今回、私が作る同人誌は「A5」サイズですが、1枚に2ページレイアウトできるように用紙は「A4」サイズを選択し、方向を「横」にしました。ページ単位で作るなら「A5」の「縦」を選ぶことになりますが、後述する「面付」という作業を簡略化するために、見開き(2ページ)単位で作っていきました。

写真や文章を配置してレイアウトデータを作る際に注意したいこと

今回作った出力データ。6ページ目の隣が11ページ目になっている秘密は次項で紹介。

今回作った出力データ。6ページ目の隣が11ページ目になっている秘密は次項で紹介。

レイアウトのための準備が整ったら、写真や文章を配置していきます。Adobe Illustrator CCの使い方は書籍などに譲るとして、ここでは私が制作していった流れを紹介しましょう。

まずは、ベースとなるフォーマットレイアウトを決めました。フォーマットレイアウトとは、フォントの種類、見出しのサイズ、ノンブル(ページ数)の位置などの設定を指します。同人誌全体を同じフォーマットにすることで、統一感を出しています。

この中で、フォント選びが難しい要素のひとつですが、私は読みやすいゴシック系を使っています。もちろん、小説の同人誌であれば明朝系のほうが雰囲気は出ると思います。ですから、作る同人誌の内容に合わせて、しっくりくるフォントを選びましょう。なお、フォントの話は、「同人誌デザイン入門編(2) 書体の基礎知識」をご覧ください。

フォーマットレイアウトを決めたら、Adobe Illustrator CCでデータを組んでいきました。まず、メインコンテンツ(ここでは「いえキャン△□」への道)の大見出しは、「長方形ツール」で横幅いっぱいで高さのある長方形を作り、背景に模様をつけました。

模様は、アウトドアをイメージできる緑がかったものを使います。また、文字は太字で目立たせます。レシピページの大見出しは、写真を大きく見せたいので、背景にクリーム色を敷くだけのシンプルなものにしました。色味にクリーム色を使ったのは、大見出しの背景に使った柄にある色だからです。色をたくさん使う方法もありますが、失敗すると散らかったイメージになりますので、私は色数を抑え目にしています。

2番目の作業としては、ドラッグ&ドロップで、画像を配置します。メインコンテンツは、きっちりとサイズを決める必要はなく、印刷範囲に収まる程度にラフな感じで配置しました。これは、テキスト量で変更する予定だったからです。

レシピページの画像は、どのページを見ても同じ位置に同じサイズで配置されるよう、ページの横幅いっぱいに配置しています。なお、写真の配置における注意点は、データの端部ギリギリに配置しないということです。

今回の印刷手段は家庭用プリンターを使って端まで印刷する予定ですから、端部ギリギリまで原稿データを配置しています。しかし、印刷手段によっては端部に置いた画像の一部が印刷されないことがあるので、重要な部分が見切れないように、画像の配置には注意しましょう。

次に、別のアプリで作ったテキストデータを、Adobe Illustrator CCの「テキストツール」を使ってレイアウトします。メインページのテキストは思ったよりも少なかったので、画像を1枚追加して対応しました。レシピページは、文字があふれたところはテキストを短めにして、ページ内に収まるようにしています。

このテキストのレイアウトで注意したいことは、見出しと本文の配置です。これには、デザインの基本原則のひとつ「近接」を用います。近接を簡単に説明すると、近いものには関連性があり、遠いものには関連性がないように見えるテクニックです。

見出しとテキストを近くに配置し、別の見出しとテキストのブロックとのあいだは、距離を空けてレイアウトします。これにより、見出しとテキストがワンセットに見えるのです。なお、近接の詳細は「同人誌デザイン入門編(4) 配置の基礎知識」をご覧ください。

ただし、今回のレシピページは、A5サイズということもあり、あまり間隔を空けられませんでした。ですから、あくまでも注意点のひとつとして、参考にしてください。

最後はノンブルの配置です。今回は、柔らかいイメージにしたかったので、黒丸の白抜き文字で表現しています。これで、本文データは完成です。

表紙は、見る人にわかりやすいデザインを心掛けて作ります。

表紙は、見る人にわかりやすいデザインを心掛けて作ります。

表紙のデータは、メイン画像を配置した後に、「ゆるキャン△」のロゴをインスパイアしたようなロゴを作成して配置しました。また、裏表紙は、メニューをモチーフに、掲載レシピを配置したデザインにしてみました。この表紙と裏表紙のデザインは、仮にこの両側しか見てもらえなくても「何が書いてあるか」を知ってもらえるデザインにしています。デザインの目的は、きれいに作ることだけでなく、相手に意図を伝える手段として考えると、どのようなデザインにしたらいいか、アイディアを思い付くことがありますよ。

レイアウト時に役立つ機能

Adobe Illustrator CCには、レイアウトに役立つ機能がいくつかあります。その一部をご紹介しましょう。

印刷範囲を知るためのトンボ

作業範囲の外にある枠線がトンボ代わりになっている。

作業範囲の外にある枠線がトンボ代わりになっている。

まずは、レイアウトを決める際に基本となる「トンボ」です。これは、印刷業者を利用した場合、サイズぴったりに作っていると、印刷後に紙を裁断する際、位置がずれて内側が切れたり、外側が残ったりすることがあります。

そこで、トンボという、印刷の範囲や断裁の予定ラインなどを示すものを用意し、「この線の内側なら絶対に印刷される」というガイドラインとするのです。そして、さらにこの断裁の予定ラインの外側にも、念のため「塗り足し」という作業で、万が一に備えます。この塗り足しをしなかった場合、例えばA4の紙でトンボの内側だけを赤く塗っていた場合、紙を裁断したときにトンボの外側の色を塗っていない部分が見えてしまうことがあるのです。

同人誌を作る場合、誌面デザインではあまり気にすることはないかもしれませんが、表紙などを全面印刷したいときに役立ちます。トンボは、新規ファイルを作成した時点で、原稿となるエリアの外側に、トンボの代わりになる赤い枠のラインで表示されます。

ガイドを設定しよう

このようにガイドを引けば、画像やテキストなどをきれいに配置ができる。

このようにガイドを引けば、画像やテキストなどをきれいに配置ができる。

「ガイド」も、レイアウトをする際に欠かせない機能です。ルーラー部分にカーソルをあててドラッグすると、シアン系の線(色は設定で変更可能)を引くことができます。このガイドは印刷されませんので、どこに写真を置いて、どこにテキストを置くのか、良いガイドになります。特に、最初にフォーマットレイアウトを作る段階で、このガイドを引く作業をすると、後が楽になりますよ。

レイアウトしたページを本にするための面付作業

ページレイアウトがすべて完了したらページ順にPDFとして出力し、あとはプリンターの「冊子印刷機能」を使って印刷するだけです。ですが、冊子印刷機能がないプリンターをお持ちでない人や、別の印刷手段を使いたいという人もいるかもしれません。そこで、今回はプリンターの冊子印刷機能に依存しない方法で制作してみました。この方法は、汎用性が高い代わりに、制作の難度はちょっと高めです。もし「簡単に制作したい!」という方は、キヤノンの公式サイト「おうちでつくる同人誌」を参考にすればスムーズに作れると思います。

さて、ここからは冊子印刷機能を使わない方法です。冊子印刷機能を使わずに、レイアウトしたページを本として印刷するためには、面付という作業が必要です。これはA5の本を印刷するならA4サイズにページレイアウトを2ページ分配置する作業です。そう聞くと簡単に聞こえますが、製本形式によってはルールに則って面付しなければいけません。

例えば、スタンダードな製本方式のひとつ「中綴じ」で16ページの本を作るのであれば、1ページ目の隣は16ページ目にしなければいけません。つまり、前項で掲載した出力データサンプルが、A4サイズであるのも、6ページ目の隣が11ページ目になっているのも、面付されたデータだったからなのです。誌面の面付サンプルは、以下の画像のとおりです。

左綴じの中綴じ冊子の面付け例。右綴じだと逆になるので注意が必要。

左綴じの中綴じ冊子の面付け例。右綴じだと逆になるので注意が必要。

この面付サンプルを見てわかるとおり、中綴じで作る場合、1枚の紙の表面に2ページ、裏面に2ページと、合計4ページ印刷されます。つまり、ページ数が4の倍数になっていないと、中綴じ冊子として成立しないので、同人誌の制作途中でページ数が足りなければ増やすか減らすかして4の倍数にしなければなりません。「1ヶ月で作れた!はじめての同人誌づくり」の1回目で、本は4ページ単位で作る……と書いたのは、この面付を視野に入れてのことだったのです。なお、この図版は左開き用なので、左開きの本にしたい場合は、ページ順が逆になります。このように、面付というのは印刷データづくりの最難関ともいえるでしょう。

なお、製本方法が「袋綴じ」の場合は、表紙と裏表紙以外はほぼ順番にレイアウトすることで作れます。両面印刷しないので紙の量は増えますが、ページ数を4の倍数にする必要もありません。今回は、すべてが完了後、印刷用にPDFフォーマットで出力しました。もちろん、そのままのデータでも印刷可能ですが、一度PDFにすることで印刷範囲も見えてレイアウトの確認ができる利点もあります。

まとめ:ページレイアウトは印刷方法を見据えて行いましょう

今回は、同人誌の誌面レイアウトのやり方を紹介しましたが、参考になりましたか? 私にとって、原稿を書いたり、写真を撮ったりする作業は、普段の仕事の延長です。しかし、Adobe Illustrator CCを使って、同人誌の誌面をレイアウトするのは初めてのことでした。特に、中綴じの面付作業は、思いのほかたいへんで、冊子印刷機能を使ったほうが良かったかなとも思います。ですので、事前にどのような形で印刷するのかを検討した上で、ページレイアウトをしましょう。

編集部コメント

今回は、誌面レイアウトに挑戦する記事でした。誌面レイアウトは、同人誌づくりの工程の中で、多くの人が一番なじみのない作業かもしれません。しかし、この工程を越えれば、あとは印刷するだけで完成です!次回の「1ヶ月で作れた!はじめての同人誌づくり」では、キヤノンの家庭用プリンターを使って、実際に印刷する話です。印刷後に、どのように製本したかも書かれていますので、ぜひご覧ください。



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