同人誌デザイン入門編(2) 書体の基礎知識:種類や選び方を紹介

ライター : 上林将司

最近は、様々な書体を使って文字をデザインしている同人誌も多いですよね。書体とは、「あるデザイン方針で作成された文字の集まり」のことです。そして書体と同じような意味で使われることがある「フォント」とは、PCで書体を扱うときのデータファイルのことです。

インパクトのある書体を使ったタイトルロゴなどは目を引きますし、絵柄に合っている書体が使われていると「センスがいい!」と感じたりもします。この記事では、そんな書体の基礎知識のほか、どこでフォントを手に入れられるかなどについて紹介したいと思います。

書体の種類を知ろう

書体には「日本語」「欧文」「簡体字(中文)」「アラビア文字」「ハングル」など、さまざまな文字セットがありますが、ここでは皆さんがメインで使うであろう「日本語」と「欧文」の書体について紹介します。

日本語書体の種類

日本語書体で最もポピュラーな「ゴシック体」と「明朝体」を紹介します。どのようなデザインの書体なのか見ていきましょう。

ゴシック体

ゴシック体は、縦棒と横棒の太さが均一。

ゴシック体は、縦棒と横棒の太さが均一。

ゴシック体は、文字の縦棒と横棒の太さが均一で、余計な装飾が少ない書体です。シンプルなデザインで、読みやすい書体といえるでしょう。実際の太さは、バランスを考えて調整されています。太めのゴシック体は力強い印象があるので、大きな見出し文字に使われることが多いです。逆に、細めのゴシック体は主張が少ないので、本文や写真につける解説文(キャプション)などでよく使われています。

明朝体

明朝体は縦棒が横棒に比べて太く、筆書きしたようなデザインが施される。

明朝体は縦棒が横棒に比べて太く、筆書きしたようなデザインが施される。

明朝体は、縦線が横線に比べて太く、メリハリのあるデザインの書体です。10世紀頃の中国で盛んだった「木版印刷」で使われていた書体が源流とされています。「止め、跳ね、払い」といった部分のデザインが特徴で、筆書きのようなイメージがあります。

そのほかの書体

明朝体やゴシック体以外にも「隷書体」「古印体」「行書体」などがある。

明朝体やゴシック体以外にも「隷書体」「古印体」「行書体」などがある。

明朝体やゴシック体以外にも、いろいろなルーツを持った書体があります。例えば「隷書体」は、紀元前より使われてきた古い漢字書体のひとつで、皆さんがよく目にするお金(お札)の文字としても使われています。

怖いイメージのある「古印体」は、名前に「印」という文字が入っていることからもわかるように、元々は印章用の書体です。ですが、その見た目のおどろおどろしさから、ホラー作品に使われるようになり、その用途が定着していますね。

ほか、筆で書いた文字そのものに近いデザインの書体もあります。一画ずつ筆を離して書く「楷書体」や、流れるように筆を走らせる「行書体」などは、和がコンセプトの本や店舗のロゴなどに使われています。

欧文書体の種類

次は、欧文書体について紹介しましょう。欧文書体……つまり、アルファベット用の書体は、大きく「セリフ体」と「サンセリフ体」の2種に分類されます。デザイン的には日本語の明朝体とゴシック体にちょっと似ていますが、成り立ちは違います。

セリフ体

セリフ体は、線の端に飾りがついている。

セリフ体は、線の端に飾りがついている。

文字の端に施される装飾のことを「セリフ」といい、このセリフがある欧文書体全般を「セリフ体」と呼んでいます。装飾があるので、日本語書体でいうところの明朝体のような雰囲気がありますね。実際、明朝体に使われている欧文はセリフ体ですから、相性はばっちりです。

セリフ体は、有名なところでは歴史のある雑誌「TIME」や「VOGUE」のタイトルロゴにも使われています。ロゴだけでなく、英字新聞では本文の書体にも使われています。

サンセリフ体

サンセリフ体は、線の端に飾りがついていない。

サンセリフ体は、線の端に飾りがついていない。

「セリフ」の前にフランス語の「sans=なし」がついたサンセリフ体は、セリフのない欧文書体全般を指します。日本語書体のゴシック体の雰囲気に近くなります。なお、ゴシック体に使われている欧文はサンセリフ体です。

サンセリフ体は、車メーカーの「TOYOTA(トヨタ)」や「NISSAN(日産)」など、製造系の企業ロゴによく使われています。ほかにも、ゲームメーカーの「Nintendo(任天堂)」や、アニメショップチェーン「animate(アニメイト)」のロゴなど、挙げていくときりがありません。ちなみに、同人誌を多数取り扱っている「Melonbooks(メロンブックス)」も、ロゴはサンセリフ体です。

欧文書体は、各書体のバリエーションとして「イタリック体」と呼ばれる文字を傾けた種類や、縦長書体の「Condensed(コンデンスド)」、文字のラインの中にさらに線を入れた「Inline(インライン)」などがあります。それぞれの書体の特徴に加え、セリフ体、サンセリフ体両方の文字が用意されている欧文書体もあります。

なお、イタリック体は、斜めに傾けた状態できれいに見えるようにデザインされた書体ですが、ただ傾けただけの書体も存在していて、その場合は書体名の後ろに「oblique」とついています。

書体の中には、セリフ体、サンセリフ体の両方を持つタイプもある。

書体の中には、セリフ体、サンセリフ体の両方を持つタイプもある。

フォントの表記とフォントファミリーについて

日本語フォントファミリーと欧文フォントファミリーの書体一覧例。

日本語フォントファミリーと欧文フォントファミリーの書体一覧例。

フォントには、「ウェイト」(太さ)のバリエーションが用意されているものがあります。欧文書体では、太さの細いものからLight、Regular、Bold……といった名称がつけられていることが多いですね。日本語書体の場合は、ウェイトの頭文字をとって書体の後ろにL、R、Bとつけることもありますし、3、6、9といった数字で表すこともあります(太いほど数字が大きくなります)。

ちなみに、これらの太さのバリエーションと、先ほど紹介したイタリック体などの同じデザインコンセプトを持つ書体をまとめたものを「フォントファミリー」と呼びます。

フォントファミリーを使う利点は、デザイン上のまとまり感の高さです。例えば、写真やイラストをメインにした本を作りたいと思った場合、いろいろな種類の書体を交ぜて使うと、デザイン的にごちゃごちゃしてしまいます。そこで、「1つの書体ファミリーのみを使う」という制限を自分の中で決めて、見出しにはウェイトの太い文字を大きく使い、長めの文章は細めで大きさも小さく使う……といった作り方をすると、きれいにまとったデザインにすることができます。

書体の使い分け

ここからは、書体をどのように使えばいいのかについてご説明します。

小説の同人誌に使いたい書体

小説の同人誌を作る場合、縦書きで読みやすい必要があります。明朝体は縦棒が太いため、縦書きの文章と相性が良いです。ちなみに、大衆週刊誌など、縦書きの本に使われる本文書体の多くは明朝体です。

モチーフのある同人誌に使いたい書体

同人誌では、モチーフとする作品に使われている書体に似た書体が使われていることがあります。例えば、「新世紀エヴァンゲリオン」なら各話のタイトルに使われて印象的だった極太な明朝体(マティスEBという書体が使われています)、「進撃の巨人」ならゴシック体をちょっと縦長に加工するとか。こういった工夫がしてある同人誌は、その作品の雰囲気を大事にしている感じがして、手に取ってもらいやすくなるかもしれません。

優しい雰囲気にしたいときや、小さい子に興味を持ってほしいとき使いたい書体

ゴシック体のバリエーションとして、角を丸くした「丸ゴシック体」や「ポップ体」などがあります。いずれも親しみやすい雰囲気を持っているので、デザイン的に優しい雰囲気にしたいときや小さい子に興味を持ってほしいときなどに使えます。

書体はどこで入手する?

現在、営利目的で使用できる書体を使えるようにするには、期間契約(サブスクリプション)や買い切りのほか、無料でダウンロードできる商用フリーの書体を手に入れるといった方法があります。

サブスクリプションで書体を入手

サブスクリプションサービスは、契約期間内であれば、書体を自由に使えます。このタイプのサービスで使える書体数は数百から数千と豊富で、商業印刷で使用実績のある書体が多いです。

商業系のデザイナーは、クライアントからのさまざまな注文に対応できるよう、サブスクリプションサービスに入っていることが多いです。

サブスクリプションサービス例

MORISAWA PASSPORT ONE

MORISAWA PASSPORT ONEは、日本語書体の老舗「モリサワ」の全書体のほか、ヒラギノ書体、タイプバンク書体、多言語書体など合わせて、1,000書体以上が使えるサービスです。

www.morisawa.co.jp

年間定額制フォントサービス「LETS」

500を超える日本語フォントや欧文、繁体字、簡体字などが使える年間定額制書体サービスです。また、「LETS」のほかに「Monotype LETS」「イワタLETS」「モトヤLETS」などのサービスもあります。

lets-site.jp

買い切りで書体を入手

買い切りは、その名のとおり、書体を使用する権利を買うことです。上で挙げたサブスクリプションサービスを展開している各社の書体も、それぞれ買い切ることができますが、日本語書体の場合、1書体で数万円するため、たくさんの書体を使いたい場合は金銭的におすすめできません。

ですが、「かな/カナ」のみの書体や欧文書体などは比較的安価ですから、ピンポイントで使いたい書体を購入するのもいいと思います。

私の場合、素敵な書体を作っている個人のデザイナーさんなどの書体は、応援の気持ちも込めてなるべく購入しています。

買い切りサービス例

書体素材集フリーダウンロードのフロップデザイン

フロップデザインフロップデザインでは、個性的なデザインの日本語書体を多数販売しています。デザイナー向けに無料でダウンロード&使用できる書体もあります。少部数の同人誌はそのまま使ってOKですが、商業作品に使用する際は購入が必要になります。規約は変更される可能性がありますので、使用される前に利用規約を必ずご確認ください。

www.flopdesign.com

商用フリーのフォントを使う前に

商用フリーの書体を入手Webには無料でダウンロードできる「商用フリー」の書体が数多く公開されています。買い切りサービス例で挙げたフロップデザインでも入手できますし、検索サイトなどで検索するとたくさんの紹介サイトがヒットします。

とはいえ、そのWebページで商用フリーと書いてあっても、完全に商用フリーであるとは限りません。ダウンロードした書体には基本「Readme」などのテキストデータが入っていますので、利用条件を正しく理解してからご利用ください。利用条件が明確でない場合、そのフォントの使用はおすすめできません。

なお、商用フリー書体をまとめた書籍も販売していますので、ネットで入手した書体を使うのが不安な方は購入を検討してみてください。

同人イベントなどで頒布するときの注意

フォントにはそれぞれ著作権がありますので、許可のないフォントを使っている本を販売することはできません。ですから、同人誌を販売する目的でフォントを使う場合は、「商用利用可」のものを選びましょう。今回ご紹介したフォントサービスを検討したり、商用利用可のフォントを探したりして、自分の好きな書体を見つけてください。

編集部コメント

普段見慣れている文字ですが、その形やデザインによって名称があるのですね。書体の使い方一つで作品の印象が変わることがイメージできました。様々な書体を試して、印象の違いを確かめてみたいです。

次回の「同人誌デザイン入門」は色についての基礎知識を紹介しています。同人誌をデザインする段階で、「どの色を使えばいいのか?」と思い悩んでいる人に、ぜひ読んでいただきたい内容です!

キヤノンは、本サイトに情報を掲載する際には万全を期していますが、それらの情報が正確であるか、最新であるか、お客様にとって有用であるか等について、一切保証いたしません。

運営について

「どうつくる どうじんし」はキヤノンが運営する同人活動応援サイトです。
キヤノンは、本サイトに情報を掲載する際には万全を期していますが、それらの情報が正確であるか、最新であるか、お客様にとって有用であるか等について、一切保証いたしません。

お問い合わせはこちら

同人誌とZINEを楽しむための情報をお届けします

Twitterアカウント@Canon_doujinで
最新情報を発信しています