おもしろ同人誌紹介 食べ方を集めた「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」

おもしろ同人誌紹介「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」

ライター : 竹田あきら

おもしろ同人誌紹介「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」
食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編

同人作家が気になった一冊を紹介する「おもしろ同人誌紹介」。今回紹介するおもしろ同人誌は、同人誌サークル版元ひとり所属の竹田あきらさんが推薦する一冊。シウマイ弁当の食べ方を追求した同人誌「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」です。なぜ、著者の市島晃生さんは食べ方に目をつけたのか。一冊の同人誌ができるまでと著者流の同人誌活動について聞きました。

食べ方に着目した同人誌「食べ方図説」

皆さんも食事をする際、目の前にした料理の食べ方について、自分なりのこだわりはないでしょうか? 好きなおかずを最初に食べるタイプ、反対に好きなおかずを最後まで取っておくタイプなど……いろいろな人がいると思います。そのようなそれぞれの人なりの食べ方に注目した「食べ方図説」。2017年8月に刊行されたシリーズ第1弾「崎陽軒シウマイ弁当編」は、崎陽軒が製造しているシウマイ弁当の食べ方を特集しています。

図説するほど奥が深い。横浜名物「崎陽軒のシウマイ弁当」とは?

この同人誌を説明する前に、まずは崎陽軒のシウマイ弁当を紹介します。崎陽軒シウマイ弁当は、横浜名物の駅弁として知られており、横浜駅、新横浜駅、川崎駅など、神奈川県下のJR・私鉄の駅から、東京、千葉、埼玉、静岡県内の駅やデパート、ショッピングモールまで、いまや駅弁の枠を越えて販売されています。

崎陽軒シウマイ弁当
崎陽軒シウマイ弁当

崎陽軒シウマイ弁当の中身は、もちろんシウマイがメインとなっていますが、数種類のおかずが入っている幕の内弁当となっています。シウマイ5個のほかに、鶏唐揚げ、鮪の照り焼、かまぼこ、玉子焼き、筍煮、切り昆布、千切り生姜、あんずで構成されています。俵型のご飯8個といっしょにこれらのおかずを食べることになるのですが、人によって食べる順番が違うと、著者の市島さんはいいます。

「メインおかずであるシウマイは5個、しかし、俵型のご飯は8個あります。これがミソで、シウマイと俵型のご飯が同じ数なら、シウマイ1個でご飯1個の公式が成り立ちます。しかし、シウマイとご飯の数が違うことから、ほかのおかずも絡めた複雑な方程式が見えてくるんです。食べ終わるまでの道筋を詰将棋にたとえ、それぞれ何手で食べ終わるのかも同人誌にしるしてあります」。

崎陽軒シウマイ弁当の画像の上に、食べる順番を番号でしるして、食べ方をイメージしやすく紹介しています。
崎陽軒シウマイ弁当の画像の上に、食べる順番を番号でしるして、食べ方をイメージしやすく紹介しています。

豪華絢爛なゲストが、自分流の「食べ方」を披露

「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」が持つおもしろさのポイントは、崎陽軒シウマイ弁当を愛してやまない著名人が、みずからの食べ方を紹介している点です。登場するのは「味の手帖」編集顧問主筆・マッキー牧元さんや、「dancyu」編集長・植野広生さん、「料理の鉄人」の放送作家で脚本家でもある小山薫堂さんなど、同人誌とは思えない豪華な面々。実は、著者の市島さんはテレビ番組のディレクターをしているそうで、著名人に声をかけるにあたっては本職のコネクションを活かしたそうです。

「同人誌を作るので出てもらえませんかと打診したところ、皆さん乗り気で協力してくれました。崎陽軒のシウマイ弁当の食べ方に、独自のこだわりを持っている人がたくさんいるのは以前から知っていましたが、取材をしてみて、崎陽軒のシウマイ弁当の食べ方を追求しているのは、私だけじゃなかったことがわかりました。また、蓋の開け方、醤油の差し方、空箱の片付け方に至るまで、自分なりのやり方、こだわりがあるのには驚かされました。まだまだ私は、浅はかでしたね」。

崎陽軒の社長も登場! 企画力で差をつけた内容

さらに本誌では、製造元である崎陽軒の社長のインタビューも掲載。シウマイ弁当を彩るおかずが今のラインナップになるまでの歴史や、弁当箱に隠されたさりげない工夫、シューマイではなく、なぜ「シウマイ」と表記するのかなど、シウマイ弁当のあれこれを社長みずからが語っています。

「有名な企業ですから、同人誌の取材なんて断られるかもしれないと思いながら、アプローチしました。実は、企業取材に踏み切れたのは、先人がいたからなんです。『この麻婆豆腐がすごい!』という、家庭用麻婆豆腐の素をひたすら食べ比べてレビューした同人誌があるのですが、その同人誌の企画のひとつに、家庭用麻婆豆腐の素でシェアNo.1の企業、丸美屋食品工業にインタビュー取材があったんです。それを見ていたから、崎陽軒のシウマイ弁当の本を作るからには、企業取材をしたいと考えました」。

こういった本格的な企画を盛り込んでいることが、この同人誌を同人誌以上のものと感じさせる理由かもしれません。

著者が語る「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」

ここまで、同人誌「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」の魅力をご紹介してきました。それでは、この同人誌は、どのようにして生まれたのでしょうか?「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」の制作秘話と、市島さんの同人誌活動に迫りました。

同人誌づくりの原点「この麻婆豆腐がすごい!」との出会い

数年前、市島さんは突然アニメにはまり、その流れで同人誌即売会の会場を訪れます。2015年の夏のお話です。

「周りにアニメを趣味にする人がいなくて、即売会の会場に行けば、同好の士と会えると期待して足を運びました。そこで、『この麻婆豆腐がすごい!』に出会いました」。

実は市島さんは、何よりも「食」が好きで、食べ物系同人誌を見つけたときは、とても感動したそうです。

「それまで、同人誌=アニメのイメージでしたが、食べ物を題材にした食べ物系同人誌なるものがあるのを知り、そのジャンルの同人誌を買い漁ってFacebookで紹介し始めました。そのうち、作っている人がうらやましくなり、出展者側として即売会に申し込んだのです」。

食べ方の順番「作法」を追求したいという思い

「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」の誕生ストーリーをさらにさかのぼると、市島さんが大学時代に出会った一冊の漫画にたどり着きます。「孤独のグルメ」の原作者、久住昌之さんの初期作品集「かっこいいスキヤキ」です。その中に収録されている久住昌之さんのデビュー作「夜行」という、駅弁をどういう順番で食べるか悩む男の心の内を追った漫画に、若き日の市島さんは感銘を受けたといいます。

「自分も同じように食べ方の順番に興味を持っていましたが、それを漫画という形で作品にまで昇華させた人がいることに驚きました。私は神奈川県民なので、崎陽軒シウマイ弁当になじみがあり、中に入っているあんずをいつ食べるかという作法に、随分と悩んでいました」。

食べ方の順番、市島さん流にいえば「作法」を追求したいという思いは、それから何年ものあいだ、市島さんの心の奥底でくすぶり続けます。いつか世に出せる日を夢見て、食べ方の作法について考えをめぐらせ、テレビ番組の制作を仕事にするようになってからも、チャンスがあれば取り上げてもらおうと企画にしたのですが、なかなか作品にまで昇華するチャンスには恵まれなかったそうです。

自分の思いをストレートに表現できるのが同人誌の楽しさ

大学時代から抱いていた思いを同人誌という形で実現しようと決めた市島さんですが、出版の知識は皆無。印刷するにもどこに頼めばいいのかわからず、「この麻婆豆腐がすごい!」の奥付に書いてあった印刷会社に連絡して発注したそうです。

「本当に周囲の人に助けられて完成まで持っていけました。同人誌の世界で活動している人は、親切な人が多いので、わからないことは聞けば教えてくれます。同人誌即売会では、著者みずから販売しているケースが大半ですから、興味を持った同人誌の著者に声をかければ、新しい人脈が広がる可能性もありますよ」。

すっかり同人誌づくりのとりことなった市島さんに、同人誌を作る楽しさを聞いたところ、「自分の思いをストレートに表現できる」という答えが返ってきました。

「同人誌の一番いいところは、企画を通さなくていいところです。崎陽軒シウマイ弁当の食べ方の作法をテレビ番組の企画にしようと試みたこともありますが、『どこがおもしろいの?』『誰が観てくれるの?』と却下されました。でも、同人誌なら自分の思いを誰の許可も得ず作品にできます」。

まだまだ続く食べ方の作法の追求!食べ方図説の続編も制作

「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」の続編
「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」の続編

「食べ方図説 崎陽軒シウマイ弁当編」は続編も制作され、市島さんは「世に埋もれている崎陽軒シウマイ弁当の食べ方をすべて掘り起こしたい」と大きな野望を語ってくれました。それと同時に、崎陽軒シウマイ弁当以外にも食べ方の作法を題材にした同人誌を作っていくのが、今後の目標だといいます。

「崎陽軒シウマイ弁当編と並行して制作したのが『食べ方図説 たまごサンド編』です。たまごサンドをどこからかじって、どんな順序でフィニッシュするかを、図解で紹介する同人誌です。たまごサンドをどこから食べるかも、人によっては人生の大問題。縦で食べる人もいれば、横に倒してかじる人もいる。もちろん、食べる順番も十人十色。たくさんの新しい作法と出会えるのを楽しみにしています」。

市島さんの食べ方の作法の追求は、まだまだ続きそうです。

まとめ:思いを形にできる。それが同人誌

何かを表現したい、誰かと共感したいというときに、思いのままに表現できるのが同人誌です。市島さんは、本職のテレビ制作の現場で形にすることが難しかったことを、同人誌という方法で実現しました。思いがあれば形にできる。それが同人誌の魅力ではないでしょうか。また、制作の際には、市島さんのように印刷会社に依頼するのももちろんいいのですが、自宅のプリンターで印刷した物でも、同人誌の世界には受け入れられます。皆さんもまずは一冊、制作してみてはいかがでしょうか。

編集部コメント

アニメ好きの仲間と出会うために訪れた即売会で、市島さんは運命の出会いを果たしたわけですが、これこそ、多くのジャンルを扱う同人誌の良さであり、出会いの場として提供されている即売会の良さですね!同人誌であれば、市島さんのように、心の奥底にしまい込んでいた思いを形にすることができる。それってすごく素敵です。でも、どうやってその思いを本にすればいいのかわからないという人は、当サイトの「はじめての同人誌づくり」を紹介した記事をご覧ください。



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