おもしろ同人誌紹介 親子で制作した「眩惑の透かしブロック パート2」

ライター : 竹田あきら

同人作家が気になった一冊を紹介する「おもしろ同人誌紹介」。今回紹介するおもしろ同人誌は、同人誌サークル版元ひとり所属の竹田あきらさんが推薦する一冊。撮り溜めた「透かしブロック」の写真を使って作った同人誌「眩惑の透かしブロック パート2」です。この同人誌を作ったのは、なんと高校教師の母とその息子。なぜお二人は透かしブロックの写真集を作ることになったのか? 制作の作業場に伺い、お話を聞きました。

透かしブロックに興味を持ったのは「会長」ことお母さん

「ニッチな世界」という言葉を耳にしたことがありますか?ニッチとは「隙間」という意味で、大企業がターゲットにしないような小さな市場や、潜在的なニーズはあるものの、まだビジネスとして成立していない分野を意味して使われる言葉です。世の中には、誰も注目しなかったけれども、そこに独自の世界が広がっていることが多々あります。そんな「ニッチな世界」を扱った同人誌が、今回紹介する「眩惑の透かしブロック パート2」です。

「透かしブロック」とは、ブロック塀の装飾性や通気性を高めるために用いる、穴の空いたコンクリートブロックのこと。「ブロック塀研究会」の2人は、そんな透かしブロックの世界に魅了され、みずからが撮り溜めた透かしブロックの写真をまとめて同人誌を作りました。

ブロック塀研究会のお二人。会長のお母さんと副会長の息子さん。今回は副会長の作業場に伺いました。
ブロック塀研究会のお二人。会長のお母さんと副会長の息子さん。今回は副会長の作業場に伺いました。

最初に透かしブロックに興味を持ったのは、ブロック塀研究会の会長を務めるお母さんの藤井美奈子さん。高校で英語の先生をしている藤井さんは、毎日、朝と夕方に、よく渋滞にはまっていました。そして、そこにブロック塀があったといいます。

会長:朝と夕方で渋滞にはまる場所は違ったんですけど、必ずそこにブロック塀があったんです。そこにある透かしブロックが、よく見るとそれぞれ違うデザインだったことに興味を持ち、ブロック塀を見かけては、透かしブロックをチェックするようになりました。そうしたら、実はいろいろな種類があることが判明して写真を撮り始めたんです。

お母さんの趣味に引き込まれ同人誌活動を始めた「副会長」

透かしブロックの世界にはまっていった会長は、撮り溜めた写真をまとめて一つの形にしたいと思い、フォトブックを作ることにしました。

会長:最初はブログで紹介していたのですが、インターネット広告でフォトブックを作れるサイトを見かけ、自分が撮った透かしブロックの写真でアルバムを作りました。2冊作っていろいろな人に見せたら興味を持ってくれて、ますます透かしブロックの世界にはまっていきました。

こちらは、最初に作ったフォトブック。
こちらは、最初に作ったフォトブック。

透かしブロックの写真を撮ってフォトブックにまとめた藤井美奈子さん。それを見ていた副会長の藤井克彦さんは、最初は興味を感じなかったものの、次第に興味を持つようになり、いつしかいっしょに同人誌を作るようになりました。

副会長:同人誌を作る手伝いをしたころから、どんどん透かしブロックの世界がおもしろくなってきました。魅力はやはりデザインの多彩さですね。透かしブロックは恐らく昭和初期にアメリカから入ってきた物なのですが、本国アメリカにはこれほど多様なデザインは存在しません。アメリカの文化を、日本人が独自のセンスで新しい文化に仕上げたんですよ。

300種類以上の透かしブロックを掲載した同人誌

フォトブックが好評だったことから、もっと多くの人に透かしブロックの魅力を知ってもらいたいと、より安価で大量に作ることができる「同人誌」を作ることにした会長の藤井美奈子さん。しかし、本を作った経験がない彼女には、どうすればいいのかわからず、仕事関係で小冊子の制作を依頼していた会社に相談し、そこで作ってもらうことにしました。

会長:フォトブックは一冊10,000円ぐらいかかるので、人にあげることができませんでした。それでも欲しいといわれるので、薄めの冊子という形にしました。最初は配る目的で作ったのですが、副会長がビジネスになると乗り気になり、同人誌として販売するようになったんです。

「眩惑の透かしブロック パート2」は、会長と副会長親子が撮り溜めた300種類以上の透かしブロックが掲載されています。さらに、透かしブロック一つひとつに2人の一言コメントがついていて、それがコミカルだと評判になっているというのです。

すべての透かしブロックに、2人の思いがこもった紹介文が書かれている。そのやりとりは、まさしく親子の会話であって微笑ましい。
すべての透かしブロックに、2人の思いがこもった紹介文が書かれている。そのやりとりは、まさしく親子の会話であって微笑ましい。

副会長:母が独自の観点でジャンル分けしたものを、僕がExcelでまとめて入稿します。一言コメントは、お互いの個性が出せるポイントなので、重要な構成要素だと感じています。母は分類に関するコメントが多く、僕は一言ネタみたいなつぶやきが大半です(笑)。

役割分担で同人誌を制作。こだわりのポイントも違う

同人誌の制作において、役割分担がはっきりしているブロック塀研究会。こだわっている部分もそれぞれ違うそうです。

会長:私は、透かしブロックの分類に一番気を使っています。透かしブロックの分類は、先駆者がいない世界なので、みずから道を切り開くしかありません。例えば「ひし形タイプ」の透かしブロックは、最初1つのジャンルでしたが、数が増えるにしたがって「反り菱」「花菱」「武田菱」と独立するジャンルができたのです。

そのほかにも、誌面を構成する上で、デザインの進化をうかがわせるようなブロックは、それぞれ並べて配置し、掲載順序にストーリー性を持たせるなど、会長は分類にこだわっています。

一方で副会長は、同人誌として作る以上、読者を意識した誌面構成にこだわっていると語ってくれました。

副会長:コラムや4コマ漫画を入れるなど、読者が楽しんで読めるような本に仕上げる点に気を配っています。個別の透かしブロックだけでなく、「透かしブロックのある風景」と題して、透かしブロックだけでなく、透かしブロックを使っているブロック塀全体の写真も掲載しました。

ブロックは単体だけではなく、組み合わせることによってさらに芸術性が増すとのこと。
ブロックは単体だけではなく、組み合わせることによってさらに芸術性が増すとのこと。

「透かしブロックのある風景」は、単体の透かしブロックとは違った楽しみ方ができる企画。施工した職人さんの遊び心が伝わってきて、愉快な気分にさせてくれます。自分の世界観を自由に表現できる同人誌ですが、読者目線でページ構成を考えて作るのも重要です。

会長は「深く」、副会長は「広く」。ブロック塀研究会が目指す方向性

ブロック塀研究会の今後の活動についても、会長・副会長はそれぞれの方向性を見いだしています。会長はより深く、副会長はより広く透かしブロックを追求していくそうです。

会長:独自に分類していますが、おのおのの透かしブロックには本名といいますか、製品の分類上の呼び名があるはずです。コンクリートブロックの会社に残っている古いカタログなどを見せてもらい、本名を探り当てたいと思っています。

副会長:アメリカでは、コンクリートブロックをモチーフにしたTシャツや、ミニチュアが売られています。ですから、ブロック塀研究会でも透かしブロックに関連したグッズを制作したいと思っています。LINEスタンプやクリアファイルはすでに販売していますし、透かしブロックのミニチュアは、現在開発中で試行錯誤の最中です。自分が思い描いている質感を出すためにアメリカからコンクリートを取り寄せるなど、あれこれと工夫をしています。

「透かしブロックのミニチュア」を作るキット。すべて手作りです。
「透かしブロックのミニチュア」を作るキット。すべて手作りです。

まとめ:同人誌がつなぐ親子の絆

ブロック塀研究会の「眩惑の透かしブロック パート2」は、日常生活に隣接する場所にも、これだけおもしろい世界が広がっていることを教えてくれる本です。他人は気付いていないけれども、自分だけが知っているというおもしろい世界は、意外と誰でも持っているもの。そんなおもしろい世界を同人誌という形で、発表してみてはいかがでしょうか?思わぬ賛同や展開が待っているかもしれませんよ。

ブロック塀研究会は、会長と副会長が親子ということも重要なポイントのひとつ。子供が成長すると、親子でいっしょに過ごす時間は少なくなりがちですが、この2人のように親子で共通の趣味を持てば、いつまでも仲良く過ごせます。家族を幸せにするのも同人誌の良さなのです。

編集部コメント

親子で作る同人誌。とっても温かい気持ちになりました。しかし、その2人が作るのが、固くて冷たいブロックとは……。おもしろすぎます。2人は、同人誌即売会でもいっしょに頒布しているそうですが、なかなか即売会では見られない雰囲気かもしれませんね。同人誌は、もはや世代を超えて親子で楽しむ物になっているってことです。皆さんも、自分の趣味をお子さんと楽しむゴールとして、同人誌を作ってみてはいかがでしょうか。また、当サイトでは「はじめての同人誌づくり」を紹介した記事もありますので、ぜひ参考にしてください。



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